chemSHERPAって何?!~含有化学物質調査について~
2024.01.25
皆さんこんにちは。お仕事お疲れ様です。
今回は品質保証部より、含有化学物質調査について、少しお話をさせていただきます。
最近は、環境に関するニュースや特集がだいぶ多くなりましたね。
テレビで見ているとどこか他人事の内容のように感じますが、身近なものもたくさんあります。
最近よく耳にするPFAS(ピーファス:有機フッ素化合物の総称)は、こびりつかないフライパンや水をはじく衣類、半導体の製造、
大規模火災時用の泡消火剤などに広く使われてきました。物質は1万種類を超えると言われています。
工場排水や米軍基地の泡消火剤の漏出などで排出された場合、土壌を汚染し地下水や河川水に入り込んでいくと、
川が汚染されていきます。
私たちがやがて飲み水として摂取していますが、このPFAS、実は厄介なことに自然界ではほぼ分解されません。
人体に長く残るため「永遠の化学物質(フォーエバー・ケミカル)」と言われていて、その安全性や人体への健康影響に関しても世界的に大変注目が集まっています。
このように、世界的な環境に対する規制が多くなる背景のもと、当社でもお客様からRoHS、REACHやSVHCなどの環境に影響が懸念されている
含有化学物質についての調査が多く依頼されるようになってまいりました。
今回は、その含有化学物質調査で主に情報伝達として使用するchemSHERPAについてクローズアップしていきます。
★chemSHERPA
まず、これなんて読むの?という方もいらっしゃるかもしれませんね。
すでに運用開始してからだいぶ経ちますので、なにをいまさらという方も多いとは思いますが・・。
chemSHERPAは「ケムシェルパ」と読み、経済産業省主導で2015年10月にリリースされた製品含有化学物質の情報伝達をするためのデータ作成支援ツールの名称です。
含有化学物質情報を報告する様式が定まらず、会社それぞれの様式で伝達していては、作るほうも大変だし、最後にまとめる人もこれまた大変だ。ということで、じゃあ、共通の様式を提供するので、皆さんこの様式で化学物質情報の伝達を運用していきましょう。とスタートしました。
chemSHERPAの様式は、アーティクルマネジメント推進協議会(JAMP)が管理し、無料でダウンロードして誰でも利用ができます。「JAMP」で検索をかけると、chemSHERPAのことがより詳しく載っているので、興味のある方はそちらも是非ご覧ください。
★chemSHERPAって何が入力されているの?どうやって伝えるの?
chemSHERPAは化学品から製品が出来上がるまでの流れに沿って含有化学物質情報を伝達していくルールとなっています。製品が出来上がっていく工程の流れと同じです。
環境に関する世界の法令などで禁止あるいは懸念されている化学物質が製品や部品にどのくらいの分量が含まれているか、
世界各国の環境の法令には遵守しているかどうか、などが主に入力されている内容です。
chemSHERPAに情報を入力して、次の工程の会社へchemSHERPAを渡して情報を伝達します。
次の会社は、その情報に自社の情報を追加したり、前の工程からいただいたchemSHERPAを複合化したりして、chemSHERPAの情報をひとつにまとめ、また次の会社へ伝達していきます。
それはまるで、いろんな会社から調達した部品で組み立てた自社の製品を次の会社へ渡していくのと同じイメージです。
★商社もchemSHERPAは必要?
部品を販売している商社から、「うちの会社は製品を作っていないので、chemSHERPAは必要ないのでは?」とお問い合わせをいただくことがあるのですが、製品は作っていなくてもその製品の含有情報を伝達する必要はあるんです。
伝達されてきた情報がそこで途絶えることのないように、製品は作っていなくてもその製品の化学物質の情報を、製品を納める次の会社へ情報提供をすることで、含有物質情報がきちんと伝達されるのです。
商社も含有化学物質情報の重要な伝達者の一員なのです。
★chemSHERPAの提供も製品品質の信頼性の証
最近は、環境にやさしいモノづくりが主流になってきています。
納期・価格ももちろん大切ですが、製品の含有化学物質情報は製品品質の信頼性の証の一部として、その重要度は年々大きくなっています。
昔は紙の証明書1枚で「含有ある・なし」しか問われなかったものが、今は「その物質はどの部位にどのくらいの量が含まれているのか」まで問われるようになり、「chemSHERPAで情報伝達を行う」ことが顧客要求の主流になってきていることからもわかるように、含有化学物質情報の伝達はますます重要な位置付けとなっています。
★でも、現実はなかなか大変…。
ひとことで「chemSHERPAを作成・提出する」とは言っても、1製品が1000点の部品から成り立っていれば、1000部品分のchemSHERPAの情報伝達が必要です。
膨大な調査の時間と管理が欠かせず、自社だけでなくサプライチェーン全体での協力が必要で、実はとても大変な作業なのです。
いかがでしたか? chemSHERPAの事、少しイメージできましたでしょうか。
多摩川電子は、グリーン調達基準書に基づき、これらの作業をサプライヤの協力のもと、共にできる限りの努力をしながら含有化学物質管理を行っていき、環境にも気を配ったモノづくりにこれからも引き続き取り組んでまいります。