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半導体試験装置のご紹介

2022.10.07

1.はじめに
今回は、半導体試験装置のご紹介をいたします。
多摩川電子は半導体試験装置を数十年前から手掛けております。(結構、昔からやっています。) 半導体試験装置で試験するデバイスはFETです。FETとは電界効果トランジスタ(Field Effect Transistor)の頭文字をとったものです。FETの使用用途には信号増幅用(高周波デバイス)とスイッチング用(パワーモジュール)がありますが、多摩川電子の半導体試験装置は信号増幅用FET、特に高周波増幅用FETを試験する装置です。(当社の最も得意とする技術分野は高周波なので・・・)

2.半導体試験装置の構成
半導体試験装置が何をする装置かと言えば、開発段階のデバイスが求める性能で出来上がっているか評価したり、量産のデバイスに異常がないか試験したりする装置です。半導体試験装置はバーンイン装置とかエージング装置と呼ばれることがあります。
試験はデバイスに一定の電圧・電流・電力を入力し、高温かつ恒温状態での性能劣化を確認します。この状態をデバイスに負荷をかけた状態といいます。
負荷をかけた状態で電圧・電流・電力の状態を各種測定器で測定します。
デバイスに負荷をかけた状態のイメージを図1に示します。この状態で1日から1か月以上放置します。

デバイスに印可する負荷の主要性能
ドレイン電圧:0V~+80V
ドレイン電流:0A~3.5A
入力電力:最大200W
設定温度:最大200℃
次項から半導体試験装置を設計する際に考慮する内容についてお話いたします。

 

3.定電流と定電圧
デバイスに電圧・電流を印可する方法は、定電流動作と定電圧動作があります。デバイスがFETの場合、定電流動作はドレイン電流が一定になるようゲート電圧を変化させる動作です。

定電圧動作はゲート電圧が一定になるように回路を動作させます。
FETはゲート電圧を変えることでドレイン電流をコントロールするデバイスです。右図のようにNチャンネルFETの場合、ゲート電圧を高くするとドレイン電流が増えて、ゲート電圧を低くするとドレイン電流は少なくなります。
この特性を踏まえて定電流動作はドレイン電流をモニタしドレイン電流の増加減分をゲート電圧にフィードバックすることでドレイン電流をコントロールします。ドレイン電流がどれくらい変化したらゲート電圧をどれくらい変化させるかという話は右図のΔId/ΔVgによって決まり、これはデバイスの特性により変わります。そのため定電流回路はデバイス毎のΔId/ΔVg特性を見越した設計が必要になり安定動作差の肝になります。

 

4.治具
治具とはデバイスを実装する部分のことです。治具にはデバイスを安定動作させるための周辺回路(抵抗、コンデンサ、コイルで構成されている)と温度制御するための温度センサおよびヒータが付けられています。デバイスには治具経由で電圧・電流・電力を入力するのでデバイスとのインターフェースが重要になります。インターフェースとは、デバイスと治具との接続点です。デバイスは通常プリント基板に半田付けして使用しますが半導体試験装置の場合は、デバイスを付け外しできるように半田付けせずにデバイスと治具を接触させる必要があります。
治具設計のポイントは、容易にデバイスを付け外しでき、デバイスと治具を確実に接続できる構造にすることです。治具設計例をご紹介いたします。
クラムシェルソケット側治具は、デバイスを乗せてカバーを閉めればワンタッチでセット完了です。

 

5.高耐熱設計
装置内で最も高温になる部分はデバイスです。材料にもよりますがデバイスの表面温度は150℃~300℃と高温になりますが、【4.治具】にあるようにその高温部周辺には抵抗、コンデンサ、コイルを使用した回路があります。

特に高周波デバイスの場合にはデバイスと周辺回路を近づけることで異常発振を抑制することができますが、逆に熱的にはデバイスと周辺回路を遠ざけることで、周辺回路の温度を下げて周辺部品の故障を防止する必要があるため、相反する構造を実現する必要があります。
右の図は当社治具の熱シミュレーション結果です。オレンジ色の中心部分にデバイスがあり最も温度が高く280℃になっています。青い部分は周辺回路があり最も温度が低く130℃です。セラミック基板の電気伝導性を確保した加工を施し熱と電気伝導性の相反する構造を実現しています。

 

6.多摩川電子の強み
多摩川電子は、1968年 創業時より高周波デバイスを使用した製品を製造しております。その経験から高周波デバイスの使い方を熟知しており、半導体試験装置で問題となる”発振”への対策知識と経験を有しております。(※発振とは半導体の異常動作の一種で半導体を破損してしまう可能性がある現象です。)カスタム設計を得意としてお客様からのご要望に沿った商品提案をすることが出来ます。

 

7.まとめ
今回は高周波デバイス用半導体試験装置の概要と設計時に考慮すべきことをご紹介させていただきました。実際の設計では試験するデバイスの性能や形状に合わせてカスタマイズします。治具は樹脂モールドパッケージ、セラミックパッケージ、表面実装パッケージ等に対応可能です。また高周波デバイス用以外に光デバイス(LDやPD)用半導体試験装置も手掛けております。弊社ではお客様のご要望に応えるためカスタム製品を得意としております。お気軽にご相談ください。