TOPICS技術トピックス

無線受信部の概要と保有技術の紹介

2023.02.07

1.初めに
昨今の無線通信の動向を見てみると5G・6Gなどの高い周波数通信・大容量化に注目が集まり、着々と我々の生活の中に溶け込んできております。しかしながら、世の中にはこのような動向に左右されず、旧来型の無線通信や、今風の多機能型半導体デバイスを使用しない無線通信機器も多数存在しております。
今回は、その中でも基本的な旧来型の無線機受信高周波部に特化して、多摩川電子で保有している技術や出来ることについてご紹介いたします。

 

2.無線受信部の構成
受信機を設計するにあたり・・・
・規格の感度を満足させる。
・規格ギリギリではなく、規格に対してマージンのある設計をする。
・規格ギリギリでは、量産時のバラツキにより規格外れが発生し、製品歩留まりが悪くなる。
・製品歩留まりを良くするために受信機の要求感度から、余裕のあるNF設計(Noise Figure)・構成が重要となる。
・受信感度とNFの関係は

受信感度 = 10log(ボルツマン定数×温度×等価雑音帯域幅)+NF+所要C/N
ボルツマン定数[J/K] :1.38065×10-23
温度[K] :絶対温度(ケルビン温度)
等価雑音帯域幅[Hz] :矩形状のフィルタの(仮想の)帯域幅
NF[dB] :Noise Figure
所要C/N[dB] :受信機で必要とされる信号と雑音の比

受信機の性能を満足させる要素としては、感度は非常に重要なファクターですが、受信機の性能としては感度だけではありません。
その他セクションにもそれぞれの役割がありますので簡単な受信機のブロック図及びその概要をご紹介いたします。

 

① 同調回路
受信する周波数を限定し、妨害信号を除去するセクション。
フィルタの減衰特性は、無線機としての妨害信号となりうる周波数帯を減衰させる。
また、無線機の感度を決めるセクションでもあるため、低インサーションロスであることが重要。

② LNA(Low Noise AMP)
その名の通り、低雑音増幅器です。
無線機のアンテナからこのLNAまでのNF性能で無線機の感度性能がほぼ決まります。
感度を決める算出式は、
受信感度 = 10log(ボルツマン定数×温度×等価雑音帯域幅)+NF+所要C/N
であり、NFの数値により感度への影響があることを示しています。

③ ミキサー
高い周波数を低い周波数へコンバートしたり、低い周波数を高い周波数へコンバートしたりするセクションです。
受信機の場合は、以降のセクションでより狭帯域なBPFで帯域を制限するため、周波数をダウンコンバートすることが一般的です。

 

④ 局部発振器
無線周波数のチャネルに対応できるよう周波数stepを考慮した設計を行います。
受信周波数を純度良く復調するために、位相雑音やフラクショナルノイズの特性を良くする必要があります。最近のトレンドとしては、VCO内蔵型PLLでフラクショナル方式が主流となります。
フラクショナル方式の強みは、より細かな周波数設定・stepが可能であることです。
フラクショナル方式の弱みは、比較周波数で割り切れないフラクショナルノイズが発生してしまうことです。
ICによっては、周波数を拡散する設定が出来るものや、基準周波数を分周して比較周波数を下げてフラクショナルノイズが発生しにくい設定ができるようになっています。
また、このようなノイズが発生しづらい構成となるよう無線システム上から基準信号周波数を検討・選定することも重要です。

⑤ 中間周波BPF
ミキサーによる信号変換によって発生する不要イメージ周波数を除去します。
また、中間周波数としてダウンコンバートした周波数は、狭帯域な濾波器により不要波を除去でき、受信信号の純度を高めます。

⑥ 中間周波増幅器
受信した信号を増幅させ、以降の復調セクションが受け取れるレベルへ増幅する。
また、AGC機能(Automatic Gain Control)を有してGainをコントロールするセクションでもあります。

このように、どのセクションにも「相手先・接続先などの条件により設計仕様を確定させること」が設計をする上で重要となってきます。

 

3.多摩川電子の強み
多摩川電子は、1968年創業から高周波無線技術に基づく製品開発・設計をしております。
受信フロントエンド部・パッシブコンポーネント・局部発振器・ダウン/アップコンバータなど多岐に渡り無線高周波モジュールのエキスパートとして実績がございます。
多摩川電子の設計部門では、受託設計・開発を主として、お客さまからの製品仕様から設計~部品手配・入手~製造~検査を一貫して実施し、高品質な開発品をご提供いたします。
高品質な設計の実現に向けては、設計段階から高周波シミュレーターを活用したフロントローディング設計・各工程でのデザインレビュー等の取り組みを推進しております。
また、依頼された製品の使い方や接続先製品を考慮した技術的な仕様提案をすることでシステム全体の品質にも寄与することができます。
パッシブ製品・アクティブ製品問わず、お客さまのご要望やお困りごとに対し、商品提案することができ、カスタム設計を得意としております。

 

4.まとめ
今回は、旧来型の基本的な無線機受信高周波部の概要と設計時に考慮することを紹介させていただきました。
受信部を構成する上で「相手先・接続先などの条件により設計仕様を確定させること」が重要であることを書きましたが、受信部に限らず送信部やその他製品においても、同様に考慮が必要です。
仕様内容だけ満足すればいいというような自己満足的な製品設計は、システムアップした際に必ず不具合が起きます。
多摩川電子では、カスタム製品を対応する際には、必ず相手先・接続先のことを考慮して設計・製造させていただきますので、お気軽にご相談ください。