第3回 高周波無線技術を支える高周波計測機のご紹介

2022.11.28

前回に続き、製造部が高周波無線技術を支える高周波計測器を紹介いたします。
高周波無線技術を支える高周波計測機のご紹介

【はじめに】
今回はパワーメータと周波数カウンタについて、簡単な説明を交えて当社保有の設備を紹介していきます。

【① パワーメータってどんなもの】
パワーメータとは高周波製品から出力されている電力を測定する装置であり、実際にはパワーメータの筐体にパワーセンサを接続して測定します。測定できる信号の種類、周波数や電力の下限または上限はこのパワーセンサに依存します。パワーセンサは大きくダイオード検波方式と熱電対方式に分かれます(測定器メーカによって呼び名は変わりますが、概ねこの2種類に分類されます)。
パワーメータはパワーセンサで読み取った信号レベルを数値として表示したり、時間変化をグラフ化したりする機能を持っています。最近はパワーメータ部分をwindowsPC上でのアプリで賄うUSB接続またはLAN接続タイプのパワーセンサも有ります。

主な観測可能項目
・RF電力(Peak、AVG)

 

 

 

 

パワーセンサは種類によって測定に適した信号形式や電力に対する測定感度が異なります。基本となるCW波(連続波:周波数と振幅がずれない一定の電磁波)やデジタル変調波(例えばOFDM変調波)など、測定する信号形式に合わせて適切なセンサを選ぶ必要があります。
例えば熱電対方式は信号形式による得手不得手は有りませんが、測定感度に劣るため低い信号レベルの検出には不向きです。一方、ダイオード検波方式は測定感度に優れ、熱電対方式では検出できない低い信号レベルを検出できますが、デジタル変調波を測定する場合、測定結果に影響が生じる場合があります。
測定器メーカの創意工夫によりこれらの弱点を克服したセンサもあるため一概には言えませんが、大まかな傾向としてセンサの方式には注意が必要です。
当社ではパワーメータとパワーセンサを20台以上保有しており、パワーセンサも熱電対方式とダイオード方式の両方を取り揃えております。周波数範囲は9kHz~50GHz、CW波からデジタル変調波まで幅広い周波数・信号形式の製品性能を評価することが可能です。

メータ:Keysight N1913Aシリーズ他
センサ:Keysight E9300A、N1921A、N8481A他

 

【② 周波数カウンタってどんなもの】
周波数カウンタとは、名前の通り信号の周波数を測定する装置です。高周波製品から出力された信号の周波数を測定します。周波数カウンタ内部には、基準となるクロック信号(規則的に変化する周期的な信号)を内蔵しております。クロック信号と外部より入力されたRF信号を比較することで、周波数を算出しております。したがってクロック信号に誤差がある場合は、測定結果に誤差が反映されてしまいます。
一般的に周波数カウンタには水晶発振器(水晶を利用して精度の高い電波を発生させる部品)が搭載されていますが、この水晶発振器の周波数精度が悪い場合は1/10万(10ppm:パーツ・パー・ミリオン)ほどの誤差が生じる場合があります。
当社で製作している発振器はインフラ・官公庁向けとなり、周波数精度の誤差は1/100万(1ppm)を求められることも珍しくありません。その為、当社で保有している周波数カウンタには水晶発振器の中でも高精度・高安定であるOCXO(温度を一定に保つ事で出力変化を抑えたもの)と呼ばれる種類の水晶発振器が搭載されております。

主な観測可能な項目
・周波数(安定度・振れ幅など)

 

 

 

 

RF信号を測定しながら結果を専用アプリ上でグラフ化する事で遷移を確認出来る機種もあります。この機能は主にレーダなどに使用されているチャープ変調(信号を時間により増加または減少する規則的ではないものにすること)を測定するのに役立ちます。また、レーダーパルスの間隔を測定することも出来ます。当社では周波数カウンタを5台保有。10Hz~26.5GHzの周波数まで幅広い周波数評価が可能です。

・Keysight 53151A、Tektronix FCA3120他

今回も2種類の計測器を紹介いたしました。高周波製品を評価、測定する装置は他にも多くの種類がありますので、これからも紹介していきたいと思います。
第4回へ続く(不定期更新です)。