TOPICS技術トピックス

光ファイバ給電技術とその応用

2020.10.17

1.はじめに
光ファイバの低損失性(0.3dB/km)を活用し、電源のないところでも光ファイバでエネルギーを伝送し、数km先まで電力を供給する技術を紹介します。
光ファイバ伝送は、低損失であると共に、軽量であり、曲げに強く、取扱が容易です。また、ガラスでできているため電磁誘導がなく、外来ノイズの影響を受けません。
耐油、耐水、難燃性にも優れており劣悪な環境でも使用可能です。


図1:光ファイバ給電の動作原理

簡単な動作原理を説明します。光源から出力する光エネルギーを光ファイバで伝送し、光電池にて光エネルギーを電気に変換し電力を供給します。光源は効率の良いレーザーダイオードを用います。光ファイバの伝送損失は0.3dB/kmであり、1kmの光ファイバを伝送した場合、約7%の損失しかありません。
光電池は、100mWの光電力を入射した場合、30mW程度の電力に変換することができます。最近では、最大出力500mW以上の光電池もありますので、センサ回路を駆動する十分な電力供給能力があります。

2.光ファイバ給電の応用例
IoTに欠かせない技術としてセンシング技術があります。電源供給できない場所でのセンシングには環境に左右されず安定に電源供給可能であり、光通信と併用することで有効な手段と考えられます。
光ファイバ給電とRoF(光ファイバ無線)を組み合わせることにより、センサで検出した信号を光信号に変換するセンサーヘッドが実現できる。更に、センサーヘッドは光ファイバで接続されており高絶縁な測定が可能となります。
以下に特徴を示します。
・高絶縁なフローティング計測が可能である。
・光ファイバ接続により電磁誘導や結合の影響を受けない計測が可能である。
・センサーヘッドを遠隔(100m以上)に配置し計測することが可能である。
・光ファイバ接続により、配線の引き回しが容易である。
・連続動作が可能である。
システムの構成例を図2に示します。


図2:システムの構成例

センサーヘッドの電気/光変換部では、センサ信号を受信し、レーザーダイオード(LD)を直接変調することにより、電気信号の強度に応じた光信号に変換します。LDは、高効率なレーザーダイオードを採用しており数mAと僅かな電流で動作します。図3にLDの電流-光出力特性を示します。LDに正弦波を印加した場合、光信号も電流波形と同様に正弦波として光強度が変化します。センサーヘッドは、発電用のPVと電気/光変換に用いる直接変調型LDおよびLD駆動回路で構成しています。微弱な信号を計測する事も考慮し、LDへの電磁誘導(ノイズ)を抑えるためシールド構造とし、小型化を実現しました。

(写真1)

図3:光変換の原理         写真1 センサーヘッドの例

コントローラの光/電気変換部は、フォトダイオード (PD)を用い受光した光信号を電気信号に変換し、増幅後、受信したセンサ信号と同様の電気波形として出力します。