チューナブルフィルタのご紹介
2021.03.05
1.はじめに
チューナブルフィルタは、その名のとおり周波数特性を変えることができるフィルタのことです(図1)。通信システムでは、例えば使用する電波の周波数帯域が広く一般的な周波数固定のフィルタでは対応できないときに、チューナブルフィルタが必要となります。弊社では、数多くのチューナブルフィルタを開発し商品化してきました。今回は、その中で新しく開発したフィルタとその技術を紹介します。
図1 チューナブルフィルタの基本動作
チューナブルフィルタは、その周波数特性から、比帯域幅固定型と絶対帯域幅固定型に大きく分類されます(図2)。比帯域幅固定型は、周波数に比例して通過帯域幅が広がるもので、減衰周波数も中心周波数からの比で規定されます。これに対し絶対帯域幅固定型は、周波数に関係なく常に同じ通過帯域幅を持ち、減衰周波数も中心周波数からの絶対値で規定されます。最近はこの絶対帯域幅固定型の要望が増えており、弊社ではその設計手法を確立し商品としてリリースしました。
図2 比帯域幅固定型、絶対帯域幅固定型チューナブルフィルタ
2.チューナブルフィルタの設計
チューナブルフィルタ設計技術について簡単に説明します。
チューナブルフィルタの基本的な等価回路は図3(a)のように書けます。共振器の容量成分を変えると共振周波数が変わるため、フィルタの周波数特性を変化させることができます。しかし共振周波数を変えるだけでは、その特性は図3(b)のように、帯域幅が大きく変化するとともに整合がとれない状態になってしまいます。欲しい特性を得るためには、共振周波数以外の特性も変化させる必要があります。
(a)基本等価回路 (b)共振周波数だけを変化させたときのフィルタ特性
図3チューナブルフィルタの等価回路と特性
フィルタは基本的に、
①共振器の共振周波数(f0)
②共振器間の結合の強さを表す結合係数(k)
③外部回路との結合の強さを表す外部Q(Qe)
の3つのパラメータで性能が決まります。整合条件を満足したうえで比帯域幅固定型、絶対帯域幅固定型に対応させるためには、周波数の変化に合わせてそれらのパラメータを表1のように変化させる必要があります。これがチューナブルフィルタ設計の大きな技術課題となっていました。
表1 特性パラメータの設計条件
3.開発したチューナブルフィルタ
弊社では、半同軸フィルタで、共振周波数に応じて共振器間結合係数kと外部Q(Qe)を独立してコントロールする独自の技術を開発し、その技術を用いた絶対帯域幅固定型チューナブルフィルタを商品化しました。図6に示すとおり、周波数を約2倍変化させても整合がとれた状態で絶対帯域幅を変えずにチューニングすることが可能になりました。
下記のフィルタはVHF帯のオクターブバンドチューナブルフィルタですが、周波数はVHF帯からUHF帯(~3GHz)まで対応可能です。
図5 開発したフィルタの外観図(半同軸型、駆動モータ、制御回路内蔵)
図6 絶対帯域幅固定型チューナブルフィルタ特性
※記載の周波数は参考値です。
今回ご紹介した技術は、半同軸型フィルタだけでなく、今後、様々なタイプのフィルタに適用する計画です。また使用する容量可変デバイスは、機械的、電子的なものを複数用意し、ご要望内容に応じて最適なものを選定して対応する予定です。