TOPICS技術トピックス

ミリ波・テラヘルツ技術開発のご紹介

2021.12.08

1.はじめに

近年、通信の高速化・大容量化が進み、一方でITU-R、電波法などでは、275GHzまでの電波の利用が割り当てられていますが、周波数が枯渇してきたこともあり、これ以上の周波数利用のために、数年前から日本、欧州など、国家プロジェクト、大学などの研究機関で通信に関する研究開発が開始(注1)(注2)されています。

(注1)総務省戦略的情報通信研究開発推進事業:https://www.soumu.go.jp/main_sosiki/joho_tsusin/scope/
(注2)ThoRプロジェクト(日本欧州共同)  :https://thorproject.eu/

ミリ波・テラヘルツ通信の主なメリットは、周波数帯域を割り当て可能なことから、高速・大容量通信が行えます(シャノンの定理により、通信容量は周波数帯域に依存)。
超高速通信を目的とする次世代通信(Beyond 5G)では、成層圏 (地上16km程度)にHAPSと呼ばれる無人飛行機を飛ばし、そこを基地局として、地上の固定・移動局(皆様のスマホやご自宅)と通信すること等が検討されています。図1に、総務省が考えているBeyond 5Gの一例を示します。

図1.Beyond 5Gのイメージ図

 

2.ミリ波技術

通信機器を開発するためには、回路技術はもちろんのこと、電磁界結合を用いた回路、半導体技術、実装技術、基板形成技術(薄膜、厚膜)など広範囲の技術が必要となります。また、市場がまだ出来上がっていないため、部品が入手できず、無い部品は、部品開発から始まります。

例えば、導波管とマイクロストリップ変換です。ミリ波・テラヘルツ帯の高周波信号は伝送損失が大きいため、距離がある伝送に損失の少ない導波管を用い、半導体などで信号処理を行う場合は、小型化に向いたマイクロストリップ線路で伝送します。このとき、周波数が高いため変換が上手く行かず、信号が消失してしまいます。この問題を解決するために、開発しているW-band広帯域導波管とマイクロストリップ変換の一例を図2に、開発部品の一部を図3に示します。

図2.65~120GHz広帯域WG-MSL変換器特性

 

図3.開発部品のイメージ図

 

従来の広帯域通信の周波数占有帯域は広くても数MHzでしたが、ミリ波広帯域通信では2GHz以上となり、従来の通信機の設計方法と異なります。ミリ波帯・広帯域の、アッテネータ、分配器、フィルタ、広帯域ミキサ、高速応答の移相器などが必要になりますが、市場品は性能未達か部品が存在しないため、通信機開発に必要なこれらの部品も開発しています。これらの通信機器は、将来的には、長期的に稼働するインフラ設備などで動作するため、高信頼性も要求されます。

従来は大手半導体メーカーでないと半導体開発が行えず、一般入手可能な、市場供給されている半導体を使用することで性能が制限されていましたが、昨今はGaAs,GaN等プロセスを用いたファンドリーサービス(半導体製造サービス)が使え、中小企業でも技術さえあれば半導体開発もできる環境になっています。ここ数年、半導体の共同開発のお誘いもあり、機器開発に半導体開発を含めることにより、開発の幅を拡大することができるようになってきました。

 

3.自社製品について少々ご紹介

弊社で過去に開発したミリ波帯装置の一例を、図4、図5に示します。
図4は、V-bandの送受信機で、高速移動体通信に使う機器として開発しました。図5は、ビームフォーミング可能な、小型のミリ波帯送受信機です。

図4.ミリ波帯 周波数コンバータ

 

図5.ミリ波帯 フェーズドアレイ ユニット

 

4.まとめ

多摩川電子における高周波、高速通信への取り組みについて紹介いたしました。現在、総合的に高度な技術が必要で、参入が非常に難しい最先端のミリ波通信機器の研究開発、設計製造に携わっており、お客様のご要望に応じ、製品を企画段階から開発、設計をご提供しています。マイクロ波、ミリ波機器などでお困りの際は、高周波機器専門会社の弊社にご相談ください。今後も、お客様のご要望に沿った製品投入、技術開発により、社会貢献を行ってまいります。