多機能モジュール製品のご紹介
2022.07.07
1.はじめに
5G通信で採用されているビームフォーミング技術や、各種レーダーシステムで使用されているアクティブフェーズドアレイ技術では複数のアンテナ素子を配列し、位相制御による電子ビームの走査を行うことから、多系統一体型の送受信アクティブモジュールが必要とされています。多系統に対応するためには、従来のコンポーネント単位の組み合わせで構成されたシステムから、複合的な機能を搭載した小型、高集積モジュールの開発が求められています。
多摩川電子では長年培ってきた高周波技術とデジタル技術を活かし、多機能型周波数変換モジュールを開発し、様々なニーズに合わせた製品を提供しております。
2.RFフロントエンドを構成するコンポーネント
図1にRFフロントエンドを構成する主な構成を記載します。
RFフロントエンドは主に下記の機能で構成されています。
- 送信系
- :D/Aコンバータ、IF帯フィルタ、IF帯AMP、ミキサ部、ローカル発信器、ローカル除去フィルタ、移相器、ドライバAMP、送信AMP、
- 切替器、不要波除去フィルタ
- 受信系
- :帯域制限フィルタ、切替器、ローノイズAMP、移相器、ドライバAMP、イメージ除去フィルタ、ミキサ部、ローカル発振器、
- ローカル除去フィルタ、IF帯AMP、A/Dコンバータ
ひと昔まえはそれぞれの機能毎にモジュール化され、同軸コンポーネントとして提供されていました。同軸コンポーネントを組み合わせて製品を設計するため、1系統だけでも大きな装置となってしまいましたが、MMICの技術進歩によって、部品の小型化が進み複数の機能を有するモジュール化ができるようになりました。フィルタ、AMP、発振器、周波数変換器など、個々の開発実績を基に図1の構成は一体化されるまでに小型化が進んでいますが、技術進化により小型化のニーズは留まることはなく、多系統、多機能化へと進んでいます。
3.多系統一体化モジュールへの対応
小型・高集積に対応するためにはRF回路の多層基板化が必須となります。多層構造内にRF信号を伝送させるため、層間、層内伝送やマイクロストリップラインと同軸の変換部、ドロップイン部品実装部など、整合の最適化が必要となります。電磁界、3次元シミュレーションを実施し最適化を進める作業は基板の構造設計と言えるでしょう。また、高集積になるとRF信号のアイソレーションや電源、制御信号のノイズ干渉、放熱設計など様々な問題が発生します。こちらも基板設計と共に機構設計のノウハウが必要となり、電気設計だけではない複合的な設計スキルが求められます。これらの課題に対して失敗を積み重ね、ノウハウを蓄積しながら、多くの製品を提供しております。
多系統一体化周波数変換モジュールの実績例
実績周波数範囲:UHF帯~28GHz帯
実績系統数:2系統~16系統
4.まとめ
今回は多機能モジュールについて紹介させていただきました。近年ではRF回路基板にA/D、D/AコンバータとFPGAを実装したデジアナ混在の一体化モジュールの需要も増えており、さらなる多機能化が進んでいます。また、搭載用製品などは限られたスペースへの配置が要求されるため、カスタム形状での対応が必要です。お客様のご要望に応えるため、製品企画段階からの提案、設計を提供し、より良い製品開発をサポートいたします。高周波でお困りの際はお気軽にご相談ください。