シングル・チップ広帯域シンセサイザのご紹介
2021.05.21
近年、サブミリ波帯までカバーするシングル・チップで実現されている広帯域シンセサイザが半導体メーカから発売され基板実装面積を小さく、シンプルに実現できるようになりました。
最新のAnalog Devices社のADF4371では、発信源4000MHz~8000MHz間で複数のVCO が搭載されています。出力を2逓倍(8~16GHz)、4逓倍(16~32GHz)されるものと1~64分周し62.5MHz~32GHzの信号を生成しています。また、2逓倍、4逓倍には逓倍による不要なスプリアスを低減する高調波フィルタが実装され、とても魅力的な機能も搭載されています。
カタログを見ると、正規化された位相ノイズ・フロアは-234dBc/Hz、1/fノイズは-127dBc/Hz の性能を持ち合わせており、年々進化しています。
応用例
広帯域シンセサイザがチップ化されたことで複雑な回路を組むことなく簡単に利用できるようになりました。そのため、海外では広帯域シンセサイザを用いた簡易的なベクトルネットワークアナライザが出回り、安価な価格帯で個人でも購入でき、普及しています。また、LOG_AMPと組み合わせ簡易的なスペクトラムアナライザとしても販売されています。
位相雑音
Texas Instruments社のLMX2594のPLL_ICの雑音性能はカタログによると
–Normalized PLL phase noise –236 dBc/Hz
–Normalized 1/f noise: –129dBc/Hz
ロックをかけたClosed-Loop Phase Noise特性は15.0GHzにて
10kHzOffset -103.46dBc/Hz
100kHzOffset -105.63dBc/Hz
上記の通り、従来のDRO(誘電体共振発振器)にも負けないくらいの位相雑音の性能を持ち合わせており、既存品の置き換えとしても視野に入れることができます。
今後、シングル・チップ広帯域シンセサイザの需要は高まり、当社の製品に搭載する機会が増えてくるものと思われます。その反面、単品のVCOとPLL_ICを組み合わせて発信器を制作する機会がますます減ってくるのではないでしょうか。